研究概要 |
これまでの劇症肝炎に対する人工肝補助療法の経験を総括して、劇症肝炎患者の血中の分子量1500-5000のいわゆる中分子量域に未知の昏睡起因物質が存在する事を想定した。そして、臨床的にはその高能率除去を主体とした確実な人工肝補助療法の確立を目指し、基礎的にはその中分子昏睡起因物質の分離同定を試た。そして、中分子除去に優れ、しかも生体適合性の高いPMMA(polymethyl metacrylate)膜血液濾過透析を開発し、これと小量の新鮮凍結血漿を組み合わせる事により、ほぼ、肝の合成系、解毒系の両面の機能を完全に代償し、高度肝不全患者であっても意識清明のもとに長期生存を保証できるcomplete liver supportの確立に成功した。一方、本濾過透析により得られた濾液から中分子昏睡起因物質をセファデックスG25(SG25)と逆相系高速液体クロマトグラフィー(RPHPLC)を組み合わせ分離同定を試たが、ヒト血漿中の中分子量域には同定困難な物質が多数(300以上)存在し、この方法による昏睡起因物質の分離同定は困難と判断された。そこで、本物質を肝不全下で肝で代謝されずに血中、更に脳中に畜積するペプチドと想定し、ディメチルニトロサミンを用いて作成した急性肝不全ラットに種々のトレーサー・アミノ酸を投与し、一定時間後卜殺して採血・採脳し、それぞれから中分子に出現する放射活性を持った物質の分離を試た。その結果、トレーサー・ロイシン,メチオニンの場合に昏睡の程度と相関して出現する放射活性を持った中分子を血中と脳のそれぞれから分離した。そこで、更に、まずRPHPLCで分離し、更にSG25で再分離する方法で中分子量物質を精製したところ、脳内より単一の放射性物質として精製する事に成功した。現在は薄層ゲル・クロマトグラフィーにて精製度を検討中であるが、もし精製度が高ければ、構造決定の上昏睡起因性の確認を行う予定であるる。
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