研究概要 |
われわれはすでに肝細胞癌患者では肝硬変症患者に比べて尿中ヘポルフィリン体、特にコプロポルフィリン(CP),ウロポルフィリン(UP)が有意に排泄増加すること、および紫外線照射下では赤色螢光を発する部分があり、肝硬変ではみられないことなどから肝細胞癌では特殊なポルフィリン代謝異常のみられることを報告した(Biochem Med31;131-139.1984)。CPは異性体として【I】型および【III】型がみられるが、一般に正常体照人ではCP【III】型が優位を占めるが肝疾患では【III】型より【I】型が主体を占めると報告されている。しかし肝硬変と肝細胞癌でCP異性体比に質的差異がみられるか否かについては不明である。そこで今回、肝硬変および肝細胞癌について高速液体クロマトグラフィーを使用して尿中CP異性体の解析を行った。その結果、正常対照人ではCP【I】は15μg/日,CP【III】は21μg/日と【III】型主体であるのに対して肝硬変ではCP【I】は55μg/日,CP【III】は50μg/日,肝細胞癌ではCP【I】79μg/dlに対しCP【III】は73μg/日と【I】型が優位であった。又、デルタアミノレブリン酸を負荷して尿中へのポルフィリン体の排泄をみると肝細胞癌ではCP【III】が、肝硬変に比べて著明に排泄されており、肝細胞での代謝に異常がみられ、特殊な処理機構を経て尿中へ排泄されることが明らかになったので、現在投稿中である(gasdro enterolo gica Japonica)。又、剖検肝を用いて肝細胞癌の赤色螢光を発する部分のポルフィリン体分析およびヘマトポルフィリン誘導体を肝硬変および肝細胞癌患者に投よして尿中ヘのボルフィリン体排泄の動態も観察中であり、肝細胞癌のヘマトポルフィリン誘導体の腫瘍親和性の診断と治療面への応用を模索中である。
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