研究概要 |
HBe抗原陽性B型慢性肝炎では血清中DNPポリメラーゼ活性が高く, 肝組織内にHBc抗原陽性肝細胞が集簇して認められ, HBVの増殖が活発である. 免疫病理学的にみると, 末梢血のNK細胞活性の低下, リンパ球のinterleukin-2産生能の低下などが観察され, HBVを排除するための免疫応答が十分でないことがうかがえる. 肝組織内でもOKT8陽性細胞は認められるものの, Leu11陽性細胞はきわめて少ない. 以上のような, 本疾患における免疫不全を回復する目的で, 従来から各種インターフェロンの投与を行ってきたが, その効果についてはなお満足のいく成績ではない. 今回, Biological response modifierとして注目をあびているInter leukin-2(IL-2)の臨床応用を試みた. すなわち, recombinant IL-2(Takeda)を投与し, 臨床所見, 抗ウイルス効果, ならびに免疫マーカーに対する影響を検討した. 10症例にIL-2治療を施行したが, 重篤な副作用はなく, 投与2週目に血清transaminase値の上昇を認めた. ウイルス効果では, 10例中9例でDNA-P活性の低下, 5例に陰性化, またe抗原の陰性化は一過性を含め3例にみられ, 肝生検組織像の改善やHBs抗原, HBc抗原陽性肝細胞数の減少も約6例に認められるなど, 本法は新しい免疫療法の一つとして十分期待がもてる. 免疫学的にはOKT4陽性細胞数の変動, NKおよびLAK活性の上昇をIL-2投与時に認め, また肝組織内でもLeu11陽性細胞数の増加やOKT8陽性細胞の実質への浸潤など, rIL-2投与による免疫活性化が確認された. 現在は, より効果的な治療を目標に患者数を増加し, 投与方法(静注や筋注法), 投与期間, 量, また抗ウイルス剤との併用の問題につき検討している. 臨床応用に関して, そのresponseを正確にmonitorする方法を研究中であり, その一つとしてNK活性が有用であることを見い出している.
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