1.中枢性化学受容器を刺激するために、椎骨動脈より高【CO_2】生食を注入すると、短潜時で換気亢進を誘発できることをまず確認した。 2.脳室内に炭酸脱水酵素阻害剤(アセタゾラマイド)を投与したのち、上記の$$CO_2$$注入負荷を行うと、速い換気亢進反応は消失した。この結果より、脳内で$$CO_2$$+$$H_2$$O$$→!←$$$$H_2$$$$CO_3$$$$→!←$$H^+$$+H$$CO(_3^-)$$の反応で生成される$$H^+$$イオンが中枢性化学受容器の主要な刺激因子であることが、明らかになった。 3.延髄内に【H^+】イオン微小電極を刺入し、細胞外液pHを測定したところ、その値は、脳脊髄液(CSF)よりもわずかに酸性であること、また、延髄内のpHの分布には、部位による差があること、などが判明した。 4.椎骨動脈より高【CO_2】生食を注入すると、約2-3秒の潜時で、脳細胞外液のpHが一過性に0.2〜0.4ほど酸性にシフトする部位が見い出された。その部位は、吻側延髄の内部で、脳底動脈の分枝である後下小脳動脈が腹側から背側に貫通する領域にほぼ対応していた。なお、従来より中枢性化学受容野として考えられている腹側表面近くのpH変化は弱く、緩やかであった。 5.延髄内の持続性発射ニューロン(132ユニット)を記録しつつ、【CO_2】注入負荷を行うと、41ユニット(31%)が換気亢進反応に対応するニューロン活動変化を示した。そのうちの27ユニットは末梢化学受容器刺激にも反応し、それらの入力を統合するニューロンであると考えられた。その部位は腹側表面のS野に一致していた。また、15ユニットは、中枢性化学変容器刺激にのみ反応し、その部位は、上記#4の後下小脳動脈のさい流域に対応していることが注目された。
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