研究概要 |
本研究により次の諸点が明らかになった. 1.実験は麻酔, 自発呼吸下のネコで実施し, 延髄内の脳細胞外液(ECF)pHの測定, 持続性発射ニューロン活動の記録の他に, 換気全体のモニターとして呼吸流量と胸腔内圧測定を行った. 中枢化学受容器を選択的に刺激するために, 椎骨・脳底動脈へCO_2飽和生食を微量注入した. 2.中枢化学受容器刺激により, ECFpHが酸性にシフトする部位が延髄内部で発見された. その変化パターンは換気亢進の時間経過とよく一致していることより, それら部位は中枢化学受容器に適した局所環境であると考えられた. その延髄内分布は, 腹側呼吸性ニューロン群と腹側表面との間に多数散在した(表面500μm以内には必ずしも限局しない)が, 少数ながら背側呼吸性ニューロン群の腹側にも発見された. 3.延髄内の持続性発射ニューロンは呼吸性ニューロン群の周囲に多数同定されたが, それらのうち換気亢進と同じ時間経過(ECFpHの反応パターンと同じ)で活動増強するものが発見された. これは化学(H^+イオン)感受性ニューロン自身あるいは, それを呼吸性ニューロンに中継するニューロンと考えられるが, その分布は上記#2の分布と極めてよく対応した. 4.炭酸脱水酵素(CA)の延髄内分布を組織化学的方法で検討した結果, その分布も上記#2, #3の分布と極めてよく対応した. 以上の事実より, 次の仮説が想定された. 中枢化学受容器はECFpHを調節する構造(毛細血管とグリア細胞でCAを含有)とH^+イオン感受性ニューロンからなる. この条件を満たす部位は, 延髄内部の呼吸性ニューロン群周囲に散在して認められ, 腹側半分に密で背側では粗という分布傾向を示す. すなわち, 中枢化学受容器は従来から報告されている腹側表面には必ずしも限局していないと考えられる.
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