研究概要 |
ニューモシスチスカリニ(以下, カリニと略す)肺炎は後天性免疫不全症候群(エイズ)をはじめとする免疫不全状態で発症し易く致命症となるケースが多い. そのために本症の診断と治療法の確立が望まれている. 現在において培養液によるカリニの増殖はほとんど成功しておらず, このために診断やワクチンの材料となるカリニに量産を画るために組換えDNAの応用が有力と考えられる. このための基礎的研究を進めて以下の成果を得たので報告する. (1)カリニ遺伝子の研究:カリニから遺伝子を分離した. まずDNAを分離してベクターに組込み, 現在ゲノムライブラリーを作製中である. このうちの一部のプローブを用いてカリニのDNA診断を試みた結果, ラットとヒト(患者)由来のカリニ塩基配列に相異が認められた. またリポゾームのSSRNAを分離して塩基配列を決定した. この結果, カリニの生物系統樹では虫むし真菌と塩基配列に相同性が認められた. (2)クローニングの標的となる蛋白質の研究:カリニには分子量11万5千ダルトン(P115と略する)の糖蛋白質が主要な膜蛋白であることが, モノクロナール抗体, 免疫電顕, ウェスタンブロット, 2次元電気泳動などの技法を駆使して明らかにした. この蛋白はハイマンノース型の糖鎖を有し, 抗原性も高いと考えられることから, ワクチンや血清診断法の標的物質になり得ると判断している. ただし, P115は2次元電気泳動法でみると数個のスポットから成る集合体で, 更らに分画してからペプタイドに切断して, 数ヶ所でアミノ配配列の決意を行う作業を進めている. 今後はアミノ酸配列から合成オリゴヌクレオチドや合成オリゴペフタイドをデザインして, P115をコードしている部分の遺伝子クローニングの実験を展開する予定である. 他方, ハイマンノース型糖鎖とマクロファージ(膜にはマンノースレセプターが確認されている)との関連についても研究を行う予定である.
|