本年度は過去2年間の成果を基礎に人工呼吸装置の臨床応用を目指して、以下のことを中心に研究を行った。 (1)人工呼吸器の駆動のための電子装置と半金物化した制御アルゴリズムを一体化して完成した小動物用人工呼吸制御システムを用いて、ラットとモルモットの肺胞気炭酸ガス濃度の制御を行った。 次に、(2)ヒトの呼吸器系の精密なシミュレーションモデルと非線形適応アルゴリズムを基礎として設計した人工呼吸制御システムについて、種々のシミュレーション実験を行い、医師から見て臨床上望ましい動脈血炭酸ガス濃度の動特性を実現した。同時に、制御入力である肺胞換気量が生理学的に安全かつ適切であるかどうかの詳細な検討を行った。これらの動物実験およびシミュレーション実験の成果のもとに、 (3)肺胞換気量を制御入力として、肺胞気炭酸ガス濃度を患者の個体差や状態によらず、望ましい特性に徐々に合わせていけるような人工呼吸制御システムを設計し、情報処理機構および駆動装置を含めた総合的な臨床用人工呼吸制御システムをほぼ完成した。 また、(4)このシステムの臨床テストを繰返し行い、実用上の安全性や問題点を多岐にわたって検討した。
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