研究概要 |
夏型過敏性肺炎の病因と発症機構について臨床的ならびに基礎的研究を行ない以下の如き成績を得た。 1.臨床的検討 (1)患者発症環境からの真菌の分離:患者の13家庭および健康者の195家庭について真菌の分離培養を行った。分離真菌のうち、患者血清に対し間接蛍光抗体法について128倍以上の抗体価を有するものを有意真菌とした。その結果、健康者家庭に比し、患者家庭に多く認められた真菌はT.cutaneum(P<0.001)とCandida属(P<0.05)であった。T.cutaneumは患者13家庭中10家庭(77%)から分離されたが、健康家庭からは全く分離されなかった。Candidaの属には各家庭に共通する有意菌は認めなかった。C.neoformansは全く認めず、雑菌性C.は通年性に一般家庭にも認めた。 (2)体液性および細胞性免疫:本症患者35名の血清中T.cutaneum抗体の陽性率は沈降抗体で85%,間接蛍光抗体法で97%,ELISA法で100%であった。細胞性免疫ではBALリンパ球幼若試験で6例中3例が弱陽性であった。 (3)吸入誘発試験:13症例に施行し、9例に確実、2例にほぼ確実、2例に陰性との結果を得た。 2.基礎的検討 家兎にT.cutaneum抗原を用い、実験的過敏性肺炎のモデルを作成し得た。 以上の結果より、T.cutaneumは夏型過敏性肺炎の重要な病因と考えられる。発症機構の詳細については現在なお検討中である。
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