| 研究概要 |
アミノ酸神経伝達物質の前駆物質であるグルタミンの合成酵素(GS)が星状膠細胞内に特異的に存在することが明らかにされ, またたこの酵素が脳内アンモニア代謝の大部分を担うことも示されたことから, この星状膠細胞が脳の機能の面でも重要な役割を演じていると考えられるようになった. 同時に又このGSを星状膠細胞の同定酵素として利用する試みもなされている. しかしこれらの報告はいずれも動物脳に限られたことから, 本研究はヒト脳GSについて行ったものである. 精製されたヒトGSについて, 同時に得られた羊及びラット脳GSと比較すると, 酵素活性の膜度に明らかに違いがみられた. このGSを家兎に感作して得られた抗血清で, ヒト及び動物脳組織を免疫染色すると, 明らかに星状膠細胞の胞体或いはその突起が染めだされ, 更に神経細胞の核膜や乏突起膠細胞の胞態などにも免疫反応性が観察された. 腸管壁内に存在する神経組織内にも多数のGFAP陽性の星状膠細胞が含まれており, この細胞も明らかにGS陽性であった. MSO投与により作製した高アンモニア血症動物脳では, GFAP陽性補状膠細胞の胞体内にGSに対する免疫反応性が増強した. この実験動物の陽管壁の観察が予定されているが, ここに見られるGS陽性細胞は全身のアンモニア代謝に大きく関与していることが想像される. 一方一般的に使用されるパラフィン標本の作製仮定でGSの抗原性が失われることから, 本研究の次の目的である脳腫瘍の診断, 分類への応用は今後の課題として継続する. 中枢神経疾患々者の血液及び髄液中のGSを測定することによる病気診断或いは治療効果判定への応用は現在進行中であるが, 症例の不足から公表するに至っていない. これらの問題点について, 更に研究を継続したい.
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