研究概要 |
脊髄小脳変性症, 非定型パーキンソン症候群の一部で, 末梢血白血球におけるグルタミン酸脱水素酵素(以下GDH)低下例が報告され, 病因との関連に興味がもたれている. 我々は, 脊髄小脳変性症, 非定型パーキンソン症候群患者の白血球GDH活性とスクリーニングし, 活性値が有意に低下している患者4名を抽出した. これら, 4名の活性値は, 正常のほぼ50%であり, いままでPartial GDH deficiencyとして報告されている症例と同程度であった. 我々は, 次に活性低下が酵素蛋白の質的異常に起因するのかを知る目的で, Radioimmunoassayによる蛋白量測定を試みた. その結果, GDH比活性(酵素活性値/酵素蛋白量)は, 正常対象群, GDH活性正常疾患群, GDH活性低下群の間で差異を認めなかった. GDHは現在までのところisozymeは見いだされておらず, 活性低下の原因として, 酵素蛋白の質的異常よりも酵素産生低下または分解亢進を示唆している. 一方, これらの症例では経口グルタミン酸負荷テストにて負荷前後の血清グルタミン酸の高値傾向がみられ, 全身的なグルタミン酸代謝の異常が示唆された. GDH活性低下例4名のうち, 3名について皮膚線維芽細胞を採取しGDH酵素活性を測定したところ, 白血球と同様, 活性の低下を見いだした. このことは, GDH活性低下が全身的であることを示唆している. つぎに, GDH活性低下例の皮膚線維芽細胞におけるグルタミン酸の毒性を検討するため, 培養液中に高濃度グルタミン酸を添加し, 一定時間培養後生細胞数を計測したところ, GDH活性低下例ではグルタミン酸耐性の低下を認めた. 今後, FDH活性低下とグルタミン酸耐性低下との関連について生化学的検討を加える予定である. また, 現在この皮膚線維芽細胞を使い, ^<35>S-MethionineをtracerとしてIn VitroでのGDH蛋白産生, 分解について検討中である.
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