研究概要 |
1.Caポンプ蛋白に対する抗体(ポリクローナル)の作製 ラット骨格筋(主として白筋)より超遠心法にて筋小胞体(SR)分画を調製した。Meissnerらの方法にしたがい、SRを0.05%(W/V)deoxy-cholateで2度抽出し、Caポンプ蛋白を精製した。この分画はSDS-PAGEにより、分子量100Kの単一バンドを呈した。この蛋白を抗原として、家兎を免疫し抗血清を作製した。Outcherlony二重拡散法によると、SR分画との間に一本の明瞭な沈降線とその外周にかすかな線の形成をみた。免疫ブロット法によると、MW、100KのCaポンプ蛋白との間に反応をみた。その他に70Kと30Kにあわい反応がみとめられた。筋原線維蛋白との間には交叉する抗体はみとめられなかった。70Kと30Kは分解産物の可能性が考えられた。このように抗血清は特異性に問題が残ったため 主として生理的実験に応用するにとどめた。 2.筋小胞体のCa摂取とCa遊離 スキンドファイバーを10倍命釈抗血清と12時間incubationした。この必理によりCa摂取能は影響されなかった。またカフェインによる筋拘縮も影響されなかった。抗体のCa輸送に対する影響は分離SRを使用して検討されてきたが、まだ結論には至っていない(MartonosiとFortier1974,SumidaとSasaki 1975)。主題とは別に細胞内pHの張力発生と興奮収縮連関への影響を分析した。正常静止筋の細胞内pHは7.0附近といわれる。代謝ミオパチーや筋ジストロフィーでは7.2以上に上昇するといわれる。この際筋収縮系のCa感受性は増加し、収縮力の増強がみられた。またCa誘発性Ca遊離は著増した。この現象はこれらの疾病における筋拘縮と筋破壊の原因となると推定した。
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