研究概要 |
Duchenne型筋ジストロフィー(DMD)や悪性高熱では筋小胞体(SR)の機能が問題となっている. SRのCa輸送の異常が指摘されてきたが, その分子レベルの異常に関する知見はきわめて乏しい. 今回Ca pump蛋白に対する抗体を作成し, Immunoblottingや免疫組織化学を行った. 対象とした疾病はDMD, 周期性四肢麻痺, 悪性症候群, 多発筋炎などである. ヒト剖検筋あるいはラット白筋より筋小胞体分画を作製し, 更にdeoxycholateで処理してCa pump蛋白を精製した. これを抗原として, 家兎でポリクローナル抗体を作製した. 抗体は免疫拡散法やimmunoblot法で確認した. 筋凍結切片を使用して免疫組織化学を行った. 二次抗体にはVecstainABCキットとを使用した. Deoxycholateで抽出したCa-pump蛋白は主として100KDよりなり, 少量の51KD, 30KDの蛋白を混じていた. Immunoblotでは, 100KDの主バンドが濃染し, これより, 高分子領域, 70KD, 53KD, 27KDに淡染するバンドをみとめた. 免疫組織化学により筋線維タイプとCa pump蛋白の分布を検討した. タイプ2はタイプ1に比し濃染した. この差は抗ラット抗体でより著明であった. タイプ2Aと2Bでは染色性に差はない. タイプ2Cには種々の程度の染色性があった. 周期性四肢麻痺にみられたtubulur aggregatesは濃染し, この構造物のSR起源が示唆された. DMDでは全ての筋線維タイプでCa pump蛋白の染色体の低下がみられた. 硝子化線維では分節性に濃染した. Ca pump蛋白の合成は細胞内Ca濃度により調節されるとの仮説がある. DMDにおけるCa pump蛋白合成の調節異常を示唆する所見と考えている. なお今回使用した抗Ca pump蛋白抗体は筋肉以外では血管内皮あるいは神経軸索を認識したことを付記する.
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