研究課題/領域番号 |
61570396
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研究機関 | 国立精神・神経センター |
研究代表者 |
杉田 秀夫 国立精神, その他, その他 (80009951)
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研究分担者 |
樋口 逸郎 国立精神, 神経センター神経研究所疾病研究第一部, 研究員 (80183573)
石浦 章一 国立精神, 神経センター神経研究所疾病研究第一部, 室長 (10158743)
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キーワード | クロロキン / Rimmed racuole / リソゾーム / カテプシンB&L / EST |
研究概要 |
クロロキンは本来リソゾーム内のpHを上昇させ、リソゾーム酵素活性を低下させる薬剤であるが、大量旦つ長期間投与する事により、ミオパチーを作成する事が知られている。我々はラットに種々濃度のクロロキン2燐酸を腹腔内投与し、100%クロロキンミオパチーを作成する条件を検討した。 その結果クロロキン2燐酸50mg/kg/日を連日8週間腹腔内に投与する事により、殆んど100%クロロキンミオパチーを作成する事がわかった。 クロロキン投与ラットはコントロールに比し体重は次第に減少した。また体重減少にほゞ比例して、ヒラメ筋の湿重量も減少した。形態的には、全例vacuole形成が認められた。筋線維直径の大小不同、好塩基性物質が縁どられたrimmed vacuoleの出現、酸性phosphatase活性の著明な亢進である。生化学的にはリソゾーム酵素、特にカテプシンB&L活性上昇が顕著であった。此等の所見は本質的にrimmed racuoleを伴う遠位型ミオパチーの組織学的所見に一致する。次にクロロキン2燐酸50mg/kg/日を連日腹腔内投与と同時に、餌に特異的システィンプロテアーゼ阻害剤ESTを0.025%混合して投与した(ESTの平均投与量は10mg/kg/日)。EST投与群では、投与当初一時体重は減少するものの3週目頃から増加し始め、コントロール群の体重に近づき8週後、クロロキンのみの体重とp<0.005で有意差を示した。またヒラメ筋の湿重量も同様であった。組織学的にはクロロキンミオパチーの発症は著明に抑制されており、筋線維直径も正常に近いものが多く、酸性phospatase活性も抑制されていた。一方生化学的には、ヒラメ筋のリソゾーム酵素活性、特にカテプシンB&L活性はほゞ正常に近い迄に低下していた。以上の事からクロロキンミオパチーの発症には、リソゾーム酵素、特にカテプシンB&Lが重要な役割をはたしており、此等の酵素を特異的に阻害する事により発症を予防する事が出来たと想定される。
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