研究概要 |
本研究は血管壁の硬化度を無侵襲に診断しうる超音波計測法の開発をねらいとするもので、本年度は以下の成果を得た。 1.血管壁厚の超音波計測に関する基礎的検討 血管壁の材質的硬さを知るには、その厚みの情報が必要である。そこで、血管壁の超音波エコー波形をケプストラム法で処理し、血管壁の厚みを高感度に計測する手法に関し検討した。計算機シミュレーションとin vitro実験から超音波周波数が5MHZでは、計測可能な最小厚みは0.2〜0.3mm,測定精度は0.02mmであり、ヒト主幹動脈の計測に十分な精度を確保できる見通しを得た。なお、ケプストラム算出には短区間データの移動平均法を用い測定精度の向上をはかった。 2.血管内留置型超音波トランスデューサの開発と血管内からの硬化度計測 小型の血管内留置型超音波トランスデューサを試作し、イヌ大動脈における局所的な圧力弾性率,壁厚,およびヤング率を測定部位を変えながら計測した。圧力弾性率は胸部大動脈から末梢に至るにしたがい3〜4倍に増加し、これまでに我々がヒト大動脈で得た無侵襲計測値とよい対応が見られた。また、壁厚値からヤング率を算出し、圧力弾性率増加に対する両者の寄与率を評価したところ、その大半はヤング率すなわち壁の材質的硬さに起因していることが明らかとなった。 3.無侵襲法と血管内法との同時計測 無侵襲法と血管内法の同時計測をイヌ大動脈にて行い、体表から無侵襲に計測する際の壁エコー同定法の基礎資料を得るとともに、無侵襲法で得られる計測値の妥当性を検証した。 次年度は以上の成果を基に無侵襲法にて、加令による動脈硬化を対象に研究を進める。
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