〔研究目的〕アポ蛋白(apo)はリポ蛋白代謝を規定する要因と考えられている。アポ蛋白のリポ蛋白代謝における役割を一層明らかにするために、動脈硬化惹起性リポ蛋白の主要なアポ蛋白であり、リポ蛋白代謝に重要な役割を果しているapoB、apoE、apoCグル-プ(C-I、C-II、C-III)に対するモノクロ-ナル抗体を作製する。このモノクロ-ナル抗体を用いて、リポ蛋白と細胞との相互作用におけるアポ蛋白の役割を、特にアポ蛋白の亜分画(apoB)やイソ蛋白(apoE、C-III)の差異に重点をおいて明らかにする。さらに、これらのモノクロ-ナル抗体を用いたアポ蛋白の測定法を確立する。〔研究経過、実績の概要〕まずapoB-100、apoB-48の血中動態についてSDS-PAGE法やWestern blotting法を用いて明らかにした。次にヒトapoBに対するpolyclonal抗体およびpan-apoB、apoB-100、apoB-48に対するモノクロ-ナル抗体の作製を行ない、数種のapoB-100、apoB-48にそれぞれ特異的に反応するモノクロ-ナル抗体を得ることができた。しかし、apoB-100、apoB-48にそれぞれ特異的に反応するモノクロ-ナル抗体は得られなかった。細胞とリポ蛋白との相互作用に及ぼす影響についての検討では、ヒト線維芽細胞およびラット肝癌細胞cell line(H-35)とLDLとの結合を現有のapoBモノクロ-ナル抗体は抑制した。さらにMonoQカラムを用いてFPLCシステムで精製したapoC-Iに対するモノクロ-ナル抗体を作製した。このモノクロ-ナル抗体を用いて、double antibody solid-phase immunoassayによる血漿apoC-I測定のRIAを試みた。この抗体はapoC-IのN末端のepitopeを認識し、この抗体とapoC-Iとの結合はapoC-Iが脂質と結合することによる立体構造上の変化に依存していた。本法により測定した正脂血症者の血漿apoC-I濃度は25.0±11.7mg/lであった。血漿apoC-I濃度は血漿トリグリセライド濃度と有意な正の相関を示した。
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