研究分担者 |
千原 国宏 大阪大学, 基礎工学部, 助教授 (80029561)
藤井 謙司 大阪大学, 医学部附属病院, 医員
田内 潤 大阪大学, 医学部, 助手 (20197544)
堀 正二 大阪大学, 医学部, 助手 (20124779)
井上 通敏 大阪大学, 医学部附属病院, 教授 (30028401)
FUJII Kenshi Osaka University Hospital
|
研究概要 |
動脈硬化の発生・進展過程における内皮細胞障害およびそれに続く内皮下の増殖性反応には居在化がみられ, それには血流の流体力学的性質が関与すると考えられている. しかし従来, 血管内の流れ構造は方法論上の制約から主としてモデル流路に基づいて推定せざるを得なかった. 本研究はマルチゲート高周波超音波ドプラーシステムを用いて非破壊的にin vivo局所血流の流体学的因子を求め, 動脈硬化の発生・進展過程と局所血流動態の関係を明らかにせんとするものである. 我々はまず生理的条件下においてイヌにおける動脈各部位の血管壁ずり応力(WSS)と, 対応する血管内皮細胞内のマイクロフィラメント束(MF)分布との関係を検討し, さらにイヌ大動脈に慢性狭窄を作成することにより同一血管内においてずり応力が増加した場合の両者の関係を検討した. WSSはマルチゲート高周波ドプラー血流速計を用いて計測した血流速プロファイルから求めた. MPは透過電顕像から, 細胞全体の断面積に対するMFの面積の比(F/C)として評価した. その結果, 1.血管別にみると, 胸部下行大動脈, 鎖骨下動脈に比し冠動脈内壁側, 外壁側ではWSSは低く(それぞれ55.6±5.8, 70.4±17.7VS21.2±4.3, 44.8±5.5dyne/cm^2, P<0.05), F/Cはむしろ高値を示した(7.7±5.4, 5.8±5.3VS14.4±7.1, 18.9±9.8, dyne/cm^2, P<0.01). 従ってMF分布にはWSSよりもむしろ血管が異なることの影響が大きいと考えられた. 一方冠動脈内では, 外壁側では内壁側に比しWSSが大きく(P<0.01), かつMFも多量に認められた(P<0.05). 2.大動脈慢性狭窄モデルでは, 上流に比し狭窄部においてWSSが大きく(35.5±5.3VS82.8±22.2dyne/cm^2, P<0.01)かつMFは増加した(6.6±3.7VS16.2±8.1%, P<0.01). 従って, 局所のWSSの増大によりMFの分布は増大し, 血管内皮はいわゆる高ずり応力領域では動脈硬化初期病変の発生に対して低抗性を示すものと考えられた.
|