研究概要 |
1.動物実験: 麻酔下の家兎およびラットの腎交感神経電気活動を記録し, インスリンと中枢を介した交感神経機能の関連を検索した. 家兎における静脈内ブドウ糖負荷(25%, 0.5g/kg)では, 一過性の血圧上昇が見られたが, 心拍数・交感神経活動・Htの減少が認められ, またマンニトールにでも同様の観察がなされたため, 高浸透圧物質による一過性の血管内容量の増加に伴うものと考えられた. Ht回復後のインスリン(IRI)が高い時期においても, 神経活動や血漿ノルエピネフリン(NE)濃度はブドウ糖負荷前と変らなかった. インスリンの家兎胞室内投与や, ラット視床下部腹内側核への局注にても, 血圧や腎交感神経活動に有意な変化は認められなかった. 今後, 無麻酔下での検討および, より長期的な糖・インスリン代謝異常との関係での検討が必要であろう. 2.臨床試験: 経口糖負荷試験に対する血圧・血漿NE濃度の反応を高血圧者および肥満者において検討した. 高血圧者では糖負荷に対する血糖・IRIの反応は正常血圧者に比し高い傾向にあった. しかし, 血漿NEは変化せず血圧は低下した. NEが上昇し血圧が変化しなかった正常血圧群と異なる反応を示したことになる. 肥満者では非肥満者に比し, 血糖・IRIの上昇は大であり, 血漿NEの上昇も遷延した. 圧反射を介した交感神経刺激であるtiltingでは血圧・血漿NE反応に高血圧群, 肥満群とも各々の対照群と差が認められなかった. handgripでは肥満群で反応が大であった. 以上のように, 高血圧者では糖代謝と交感神経反応との間には積極的な成績は得られなかった. 高血圧発症期の若年者や肥満者での検討が今後の課題と考えられる.
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