虚血再灌流心筋障害の原因として、活性酸素、エネルギー欠乏、Ca過剰負荷の3要因が、最近特に注目を集めている。本研究では、(1)活性酸素を産生するキサンチンオキシダーゼ系の競合的阻害剤であるアロプリノールの作用機序、(2)Ca過剰負荷と心筋障害の因果関係の2点を検討した。(1)アロプリノールの作用機序。摘出ラット心臓をランゲンドルフ法で灌流し、嫌気的灌流60分後、好気的灌流液で30分再灌流した。嫌気的灌流20分で張力発生は消失し、再酸素化によって回復しなかった。アロプリノール灌流投与群(100μM)では、張力発生は嫌気的灌流60分でわずかに残存し、30分再酸素化によって18%まで回復した。アロプリノール投与群の組織ATP量は高値に保たれ、灌流液一のCPK漏出は減少した。さらにNaーK ATP ase(脂質依存性の形質膜酵素)活性の減少やマロンアルデヒドの産生は、アロプリノール投与群では嫌気的灌流一再酸素化期を通じて予防されていた。アロプリノールによる心筋保護は嫌気的灌流期から見られ、しかも特にエネルギー代謝面での作用が重要と考えられたので、次に嫌気的灌流早期のエネルギー代謝に対する影響を見た。心筋表面NADH蛍光によれば、嫌気的灌流10分において、投与群と非投与群の間に差が無く、両者均等に好気的代謝阻害に陥っていることがわかったが、投与群では乳酸産生が多く、解糖系によるエネルギー産生が亢進していることがわかった。アロプリノールは活性酸素による障害の抑制のみならず嫌気的灌流時のエネルギー産生を維持することによって再灌流心筋障害を防止する可能性が考えられた。(2)フラ2を取込ませた幼児ラット心臓のCaパラドックス実験から、Caパラドックスにおける心筋障害の発現には、Ca過剰負荷のみならず心筋細胞の成熟に伴う膜の機能あるいは構造変化が必要条件となることが示唆された。
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