研究概要 |
(1)麻酔開胸犬13頭を用い、右冠動脈における冠灌流圧、冠血流量および右室局所機能を計測し、これらの関係を求めた。右冠動脈はバイパスを介した自家血により灌流し、バイパスに電磁流量計を設置した。右室局所機能は、微小超音波クリスタルによって計測した。局所心機能に及ぼす後負荷の影響をみるため、肺動脈を狭窄して右室圧を高くした時と平常時との間で比較した。 (2)局所心筋機能は、冠灌流圧が31mmHg以上、あるいは冠血流量が0.27ml/min,g以上の場合にはほゞ一定であったが、この限界点より以下に減少すると局所心機能は低下し、冠灌流圧の低下と冠血流量の低下との間に、直線で近似できる正相関がみられた。また肺動脈を狭窄して右室収縮期圧を平均30mmHgから45mmHgに上げると、局所心筋機能が低下し始める限界点は31mmHgから45mmHgに増大した。左冠動脈ではこの限界灌流圧が約60mmHgと考えられてをり、右室ではこの限界点がより低いことが明らかとなり、また右室の後負荷に直接的な影響を受けることが明らかとなった。 (3)冠灌流圧と冠血流量との間には、右冠動脈においては広い範囲においてほぼ直線的な正相関がみられた。また肺動脈を狭窄しても、この両者の関係は不変であった。即ち右冠動脈では、左冠動脈にみられるような血流を一定に保たうとする自己調節能が比較的弱いことが示唆された。 (4)麻酔犬25頭を用い、右冠動脈と左冠動脈分枝を完全結禁し、24時間後の心筋梗塞の拡がりを酵素染色を用いて定量化し、放射性標識微粒子により局所心筋血流量を計測した。右室では心筋梗塞は貫壁性に均一に生ずるが、左室では心内膜下層により広く分布した。この相違は、心筋局所血流量が右室では貫壁性に均一であるのに比べ、左室では心内膜下層で著しく低下する現象と密接に関係すると考えられた。
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