研究概要 |
当研究で得られた主な成果は次の通りである。自然発症高血圧ラット (SHR、30週齢、雄) は同週齢のコントロールのWistar Kyotoラット (WKY) に比べて心室重量は有意に大であったが、摘出左室乳頭筋の等尺性発生張力Tは有意差なく、dT/dtは減少傾向をしめした。イソプロテレノール、DBcAMPに対する反応性は有意差はなかった。左室心筋ミオシンアイソザイムはVM-3が増加した。腹部大動脈狭窄ラット (ASラット) は、負荷期間が24〜26週と長期のものは左室重量はコントロールに比べて有意に増加したが、Tにはコントロール群と有意差なく、dT/dtはAS群で有意に低下、イソプロテレノール、DBcAMPに対する反応性も低下した。左室心筋ミオシンアイソザイムはVM-3が増加した。腹部大動脈・下大静脈シャントラット (AVシャントラット) は、負荷10週間では左室重量はコントロールよりも有意に増加、Tは低下傾向を示したが有意ではなく、dT/dtは有意に低下、イソプロテレノール、DBcAMPに対する反応性はAVシャント群で低下傾向を示した。左室心筋ミオシンアイソザイムはシャント群で有意にVM-3の増加を認めた。SHRに長期間 (8週間) hydralazine,captoprilをそれぞれ投与するとどちらも血圧は同程度に下降したが、心室重量/体重比はcaptopril投与群では有意な減少を示し、一方、hydralazine投与群では減少はみられなかった。左室心筋ミオシンアイソザイムもcaptopril投与群ではVM-1への移行が強く認められたが、hydralazine投与群ではVM-1は有意に増加したものの程度は軽度であった。尚、負荷の除去、上記以外の生化学には当初期待した結果が得られなかったが、これには負荷除去時における初回手術の影響 (例えば腸管、腹膜の癒着など) や負荷除去手技の問題、心筋小胞体の抽出における他の膜成分混入の問題、交感神経遮断剤投与における投与量や投与期間の問題などが関与しているものと思われ今後の課題として残された。
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