研究概要 |
1.胸腺摘出モデル動物を作成し血中脂質代謝への影響を検討した。Hartley系モルモット(雌)200g,32匹を使用し、エーテル麻酔下で胸腺摘出群(16匹)、Shamope群(16匹)を作成した。各群をさらに普通食投与群と1%cholesterol食群に2分し、1カ月ごとに血中脂質分析を行った。結果:胸腺摘出(Tx群)とSham ope(cont)群の体重に差は生じなかった。血中T-choはTx群で、Cont群を上まわった。特に1%cholesterol負荷群においては、1カ月後より有意の差が生じた。129±28mg/dlVS107±26mg/dl(P<0.05)、2カ月では214±32mg/dlVS171±28mg/dl(P<0.01)またHDL-choでは1カ月で有意の差は生じなかったが、2カ月目よりTx群41±6mg/dl、Cont群31±4mg/dlと差を認めた。TGは1カ月目、2カ月目とも差を認めなかった。 2.胸腺摘出動物における肺胞Mφの変化:前記モデル動物の肺胞Mφへの影響を比較検討した。(1)光顕レベルにおいて、Cont群が、円形を呈しているのに比べ、Tx群は胞体の増大と伴にPseudo Padの延長が認められ紡垂形を呈しているものが多く認められた。現在さらに電顕的レベルでの変化につき検討中である。(2)LPL分泌能への影響を14C-trioleinを使用し測定した。2日間の培養においてTx群はCont群に比べLPL分泌能は低下傾向である事が判明した。(3)走化能への検討、Boydenのチャンバーを用いてTx群とCont群のMφの走化能への変化を検討したが、両者間で差は認めなかった。現在、活生化薬物(LPS,アセチルLDL,etc)下での走化能を検討中である。 本年度は胸腺摘出動物モデルでの血中脂質代謝、肺胞Mφの変化について基礎的検討を中心に行った。その結果、胸腺は免疫能とは独立に、脂質代謝、及びマクロファジーの活生化機構になんらかの影響を与えている機能を有している事が示唆され、動脈硬化発生機序に多大の関与をなしている可能性が考えられた。
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