研究概要 |
急性心筋梗塞のウロキナーゼ(UK)による血栓溶解療法の有用性とその評価法の確立を目的として, 投与方法の相違による生命予後, 心機能改善について, 体表面電位図(電位図)および核医学的方法を用いて検討した. 対象:本学CCUに入院した初回心筋梗塞186例(男性147例, 女性39例, 年齢33〜80歳, 平均61歳)を対象とした. 方法:UKの投与法により非投与群(C群, 30例), 15万/時間以下の経静脈少量投与群(S群, 31例), 72万/30分以上の大量投与群(L群, 48例), その間の中等量投与群(M群, 47例)および冠動脈内血栓溶解療法群(ICT群, 30例)の5群に分け, 投与法による生命予後と心機能改善度を次の指標を用いて検討した. 1.左室駆出率(心プールシンチ), 2.電位図梗塞量(87誘導電位図による正常QRS電位からの偏位量), 3.慢性期梗塞責任血管開存率, 4.急性期(30日以内)および慢性期(1月〜7年)死亡率. 結果:1.LVEFは急性期において各群間に有意差はなかったが, ICT群中既開通群55.2±10.4%, 成功群48.9±17.6%, 不成功群43.5±13.5%であった. 慢性期には各群とも改善した. 2.電位図によるΣSTはLおよびICT群で有意に減少した. またICT群における7日目と1年後の電位図梗塞量は成功群で563.7±169cm^2から398.3±395.2cm^2へ減少し, 不成功群では484.5±141.1cm^2から561.3±203.1cm^2へ増加した. 3.慢性期梗塞血管開存率はC群26%, S群50%, M群58%, L群63.6%, ICT群63.6%であった. 4.急性期および慢性期死亡率はそれぞれC群26.7%, 10%, S群9.7%, 13.3%, M群8.5%, 10.6%, L群2.1%, 2.2%, ICT群3.3%, 3.3%であった. 結論:UK投与方法は経静脈大量かICT法が良く, その評価法としてのLVEFは急性期にはsalvageされた心筋の程度を反映するが慢性期には代償による機能改善を反映すると思われた. また, 電位図梗塞量は急性期においてはICT成功の指標となり難いが, 慢性期においてはその減少が良い指標となった.
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