研究概要 |
〈目的〉洞結節の過駆動抑制現象のイオン電流機序を解明する為、以下の実験を行った。〈方法〉ウサギ洞結節領域から0.2x0.2x0.2mmの微小標本を作製、二重微小電極法による活動電位記録と電圧固定を行った。電圧固定実験では活動電位を模した15連の腔分極パルスを高頻度(6.7Hz)と低頻度(3.3Hz)で加え、それらがイオン電流に及ぼす効果を比較した。〈結果〉自動性標本に自発興奮の20,50,100%増の頻度で15連の刺激を加えると、洞結節回復時間は基本周期の286±27から303±22msecへと順次延長したが(p<0.05,n=6).これは拡張期脱分極速度の低下に起因した。最大拡張期電位は全例で2-4mV減少し、過駆動刺激の拡張期間隔延長作用に拮抗した。こうした拡張期電位の減少は、過分極により活性化される内向き電流(ih)を3mM【Cs^+】で遮断すると消失した。電圧固定下で、反復刺激後の-70mvへのテストパルスにより脱活性化される遲延【K^+】電流(ik)を測定すると、両刺激頻度間で電流値に差は見られなかった(n=10)。次に反復刺激後種々の電位へのテストパルスを加え、ikの時定数-電位曲線と定常状態活性化曲線を作成したところ、高頻度刺激後のそれらは低頻度刺激後に比べ4-10mv過分極側へ変位していた。反復刺激後-50mvの電位で種々の間隔(20-300msec)を挟み、脱分極パルスを加えた時に生ずる緩徐な内向き電流(isi)を測定した。高頻度刺激後のisiは低頻度後のそれよりも有意に小さく(p<0.05,n=6),高頻度刺激によるisiの不活性化からの回復の遲延が示唆された。一方、3mM【Cs^+】を用いた差引き法によりihを測定したところ、高頻度刺激後の方がihは約10%大であった。〈總括〉洞結節に対する過駆動刺激は、ikチャネルのカイネティクスの過分極側変位とisiの不活性化からの回復の遲延を来す結果、拡張期脱分極を抑制し、洞結節回復時間を延長させるものと考えられた。一方過駆動中に増加するihは最大拡張期電位を減少させ、過駆動抑制に拮抗することが示唆された。
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