研究概要 |
実験犬の冠動脈左前下行枝を3時間閉塞し, これを解除すると直ちに心筋に浮腫が生じ, 心室壁厚が二峰性となることを先年度報告したが, 昭和62年度は, 解除後, 1週間飼育してその後の壁厚の変化を検索した. 3時間冠閉塞解除後2時間では心室壁厚は著しく増高し, その時点で屠殺して組織学的に観察すると, 著明な心筋内出血が証明された. 解除後2時間以上観察した犬では, 壁厚は2時間以降, 次第にその壁厚を減じ解除3〜6時間後にはコントロールの壁厚に近くまで回復している. しかし, その後壁厚は再び増高し初め, 1週間後には解除2時間後とほぼ等しい厚さに到達した. この後屠殺して心筋を組織学的に観察すると, 心筋内出血はほぼ完全に消失していたが, 心筋浮腫が存在していた. 以上より, 冠閉塞解除後, 壁厚は二峰性に増大し, その原因として心筋反応性充血と再灌流傷害による心筋内出血, 心筋浮腫が考えられた. 次いで, これらの再灌流傷害を除去する目的で, 冠再開通時, 高度な冠狭窄を残こす実験をおこなっている. 即ち, 実験犬で左冠動脈左前行枝を1時間閉塞し, これを解除する際残存狭窄のない群, 造影剤遅延を伴う99%狭窄群, 遅延のない99%群および完全閉塞のままの群の4群を作成し, 1週間飼育後, 閉塞部領域の心室壁厚変化, 組織CPK, risk area, TTC染色による梗塞部領域などを測定して4群のうちどの群が冠閉塞による病変が少いかを比較する. 現在, 4群のうち2群の実験が完了に近づいている. 次年度に向けて, 実験頭数を増やしている段階である.
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