研究概要 |
ラット下肢潅流システムを確立し、血管壁でのアンジオテンシン【I】,【II】(Ang.【I】,【II】)の代謝,産生につき検討した。即ちラット腹部大動脈よりカニューレを挿入し、下大静脈より潅流液を回収する閉鎖回路系を用いて下記の実験を遂行した。 (【I】)下肢潅流システムにおけるアンジオテンシンの代謝;アンジオテンシン【II】(10μg/20ml)を毎分4mlの速度で注入潅流し回収液中のアンジオテンシン【II】を測定し、約2ug(20%)の回収を認めた。本系に各種酵素阻害物質即ちベスタチン(アミノペプチダーゼ阻害物質),カプトプリル(変換酵素阻害薬),PMSF(セリンプロテアーゼ阻害物質)をそれぞれ添加注入潅流したがアンジオテンシン【II】の回収率は有意に変化しなった。以上より下肢還流系においては約80%のアンジオテンシン【II】は代謝を受けるが、アミノペプチダーゼ,変換酵素,セリンプロテアーセ等はAng【II】の血管壁での代謝に関与しない可能性が示唆された。 (【II】)下肢潅流システムにおけるアンジオテンシンの産生:下肢還流系を用いAng【I】およびレニン基質を注入潅流しAng【II】への変換や産生の可能性を検討した。(a)Ang【I】を注入潅流した際約20%のAng【II】への変換を認めた。このAng【II】への変換はカプトプリルにより阻害されるが、完全な抑制は認められなかった。(b)レニン基質(合成)を注入した場合、Ang【II】の産生を認めた。この場合も変換酵素阻害薬によりAng【II】産生は抑制されるが、完全な抑制は認めなかった。 以上の知見より、(1)血管壁にレニン様酵素および変換酵素の存在が示唆される。また(2)変換酵素阻害薬により抑制されない非定型的変換酵素の存在、ないし直接アンジオテンシン【II】を産生する酵素系が血管壁に存在する可能性が考えられる。
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