研究概要 |
動脈壁を構成する主たる細胞である中膜平滑筋細胞と内膜内皮細胞の動脈硬化症における役割を血清中の脂質とくに低比重リポ蛋白質と, 細胞間物質である酸性ムコ多糖(Glycosaminoglycans:GAG)との関連において調べた. まず低比重リポ蛋白添加による平滑筋細胞増殖の促進は, 高脂血症性低比重リポ蛋白によりもたらされるが, 正脂血性低比重リポ蛋白では生じなかった. この高脂血性低比重リポ蛋白による増殖促進は, 添加されたGAGによりdose-responseに抑制され, 特にヘパリン, ヘパラン硫酸等のsulfatedGAGにより特異的に抑制された. また半加工品であるアルテパロン(R)によっても, 同様のsulfated-GAGによる抑制が観察された. 内皮細胞による平滑筋細胞抑制を調べるため0.4%牛胎児血清に48時間曝露して得られたconditioned mediumを用いて実験した. mediumは, 平滑筋細胞増殖を抑制した. またこの抑制は, 内皮細胞を低比重リポ蛋白添加mediumで培養した場合より強くなり低比重リポ蛋白濃度に対してdose-responseであった. 現在このリポ蛋白による抑制増強が何によるか検討中である. 特に内皮細胞のGAG産生量が, リポ蛋白(特に低比重)によりどのように変化するかを中心に調べている. また以上の実験は全て牛大動脈平滑筋細胞によるものであるが, 平行して牛冠動脈平滑筋細胞における同様の実験を行い, 低比重リポ蛋白に対しては後者の方がより増殖刺激を受ける等の成績を得ている. 初期に考案した還流重層培養モデルにおける実験は, 内皮細胞培養のsub-strateについてcollagen gel等の検討を行っている.
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