動脈内皮細胞及び平滑筋細胞を用いて相互作用を検討する実験を行った。我々の興味は主として、両細胞が産生する酸性ムコ多糖体であり、特に高脂血症下と正脂血症下での反応の比較を行うことを目的とした。 初年度は、平滑筋細胞の培養とその証明を行い、Extrinsicな酸性ムコ多糖体を用いて平滑筋細胞の増殖速度に違いが生ずるか否かを検討した。平滑筋細胞は、高脂血性低比重リポ蛋白を用いて増殖促進を行い(正脂血性低比重リポ蛋白を対照として)酸性ムコ多糖体は、増殖を抑制することを証明した。次年度は平滑筋細胞の由来血管により差があるか否かを、循環器領域にて問題となる冠動脈平滑筋細胞と大動脈細胞(共に牛由来)を用いて比較した。結果は冠動脈は高脂血症による増殖の増大が、大動脈よりも強く現われる可能性があるというデータであったが、症例数を増して検討しなければならない。次いで内皮細胞の産生する酸性ムコ多糖分体が、平滑筋細胞増殖を抑制するという基礎実験を行い、それに対する高脂血性低比重リポ蛋白の影響を観察した。リポ蛋白は容量依存性に内皮細胞による平滑筋細胞増殖抑制を抑えたが、本機序については、リポ蛋白による内皮細胞の酸性ムコ多糖体産生障害が考えられた。 以上細胞培養系を用いた実験を行ったが、併行して臨床例において冠動脈疾患患者における内皮細胞機能(アンチスロンビンIII等)や、アポ蛋白の比較等を行っている。 本実験計画の初期の目的であった重層培養系における実験は現在実験を行っているが、データとしては依然検討段階であり今後も継続する予定である。
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