研究概要 |
従来より高血圧肥大心は圧負荷の良いモデルであり、その終局は心不全であると孝えられている。近年は各種降圧剤の開発に伴いその様式が複雑化している一方、治療による高血圧心の肥大と退縮が論議されている。しかしながらそのことが心機能の点からはたして良いことなのか否かに、又心不全との関連はどうかについて定まった考えはない。外来治療中の患者に心エコー法で左室又は心室中隔が15mm以上を示す高血圧症20例について平均2年の降圧治療によりその肥大がどうなったかについて検討した。心エコー法のsensitivityを考えて3mm以上の変化を有意とすると退縮は6例(pw15.4±1.1→11.8±1.1,IVS15.5±1.1→13.5±1.4mm,p<0.01)不変例12例(pw15.1±2.7→14.8±2.8,IVS17.5±3.5→17.0±3.5mm,n.s.)より肥大例2例(pw15.0±2.1→17.5±7.8,IVS16.5±2.1→20.0±2.8mm)であった。収縮能の指標であるfractional snorteningをみると退縮例では32.8±9.2→38.9±5.2%(p<0.01)と改善していたが、不変例では31.8±6.2→32.0±9.1%,肥大例では42.6±3.6→43.8±2.7%と変化なく、高血圧心の肥大は降圧治療法にて退縮し、収縮能が改善されることが示唆された。次にSHRとWKYにアンジオテンシン【I】変換酵素阻害剤カプトリル(cp)を4週間服用させるとSHRでは心重量が3.30±0.01→2.61±0.01mg/g(p<0.01)と退縮を示しWKYでは不変であった。カプトリル服用群と対照群のそれぞれに麻酔開胸下で心拍出量を動脈にかけた電磁流量計で又左房から左室に挿入したチューブでLVEDPを測定し40m1/kg/分のスピードで急速容量負荷を行いLVEDPとSVから心機能曲線を求め比較した。SHRとWKYの治療群・対照群の4つの曲線は有意差を示さなかった。しかし、カプトリル投与により心筋肥大の退縮した群に後負荷としての血圧を対照群に一致させる為下行大動脈にsnareをかけた群では心機能曲線は有意に右下方に移動した。このことより治療により降圧し、退縮した群は、圧上昇に伴い、心不全に陥り易い可能性が考えられた。
|