研究概要 |
わが国の小児インフルエンザ菌(Hi)感染症の実態を把握するため、全国主要病院小児科の協力の下にHi全身(深部)感染症症例に関する質問紙調査を実施、先ず1982〜1984年の成績を前回1979〜1981年の成績と比較検討した。Hi全身感染症は現在までに213症例集計され、全国的に分布しているが、症例数は東京・沖縄・岡山・福岡・広島に多く、小児人口比では沖縄・香川・岡山・島取・徳島の順である。年齢別では1歳迄に76.1%,2歳迄に86.4%,3歳迄に92.0%,病型では髄膜炎92.0%は前回とほぼ同率、敗血症6.1%,肺炎・膿胸4.7%,候頭蓋炎,関節炎各0.5%であった。敗血症は0歳児に多く、髄膜炎は2歳迄に77.5%で前回に比べ低年齢化している。菌検出部位は髄液・血液・胸水の順で、莢膜抗原検索は千葉大小児科を除いて未だ普及率が低い。死亡5.2%,後遺症22.5%で死亡例は2歳末満に集中し、予後は、改善されていない。MIC,β-lactamaseにより確認されたABPC耐性Hiによる全身感染症は24例(11.3%,髄膜炎23,膿胸1)、耐性の疑は20例(9.4%)でABPC耐性症例11.3〜20.7%の間にあり、前回の5.4〜13.0%を大きく上回り、憂慮すべき問題である。 Hiは1986年千葉大小児科における気管支肺感染症137例の原因菌としても首位にある。洗浄喀痰から原因菌(判定基準:上原1971)の判明した72例中Hiは50例70%、うちβ-lactamase陽性ABPC耐性株は21例42%に認められ、難治例に多発している。下気道由来株の血清型ではb型は稀で95%以上が無莢膜株,生物型では【II】型44%,【I】・【III】型,【IV】・【V】型の順であった。遷延例における完全除菌は困灘で、宿主側要因を含めて検討を進めている。 Hib型の鼻咽腔保有率を一般培養3培地に抗Hib血清加Levinthal培地を加えて検索を始めた。0歳児中心の乳児121例中Hi陽性47例,b型保菌2例(1.7%)で同一保育園児であった。
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