研究概要 |
全国主要病院小児科の協力の下に原因菌の確実な肺炎症例(1984-86)の報告を得た結果, インフルエンザ菌(Hi)は146例中16例(11.6%)でブドウ球菌, 肺炎球菌に次いで3位であることが明らかになった. 別にHi全身感染症についての全国調査から得られたHi肺炎症例を加えた36例について各施設に補足調査協力を仰ぎ, 臨床的・細菌学的検討を行った. 男女比は1.6=1, 年齢は2歳以下77%, 1歳にピークがありHi髄膜炎よりも年長に傾いていた. 県別では沖縄11, 東京9, 千葉5, 北海道3, 埼玉石川各2, 他は1例以下, 予後は死亡11.4%, 後遺症5.5%, 軽快83.3%, 生後0日敗血症・肺炎の未熟児例もあった. 分離菌のABPC耐性3株, ABPC・CP耐性1株, 血清型別は不明が大多数で抗血清の入手の困難性を反映していた. インフルエンザ菌肺炎症例の分折はわが国ではじめて試みである. Hi感染症について基礎的臨床研究に接するため, 上原は文部省在外研究員として米国NIH, TEXAS大学に2ヵ月間滞在し, 臨床レベルで応用可能な手技の導入を考えた. RIAによるHib型抗体の測定, Outer membrane protein(OMP)のsubtyping等について今後研究協力が得られることになった. 手技上のポイントを得てOMP subtypingに検討を加え, わが国のパターンを政米のそれと比較すべく進行中である. Hiの抗菌剤感受症について, 最小阻止濃度MICを測定し1987年の143株中ABPC耐性21.0%, CP耐性2.8%, TC耐性11.2%であり, ABPC耐性株はすべてβ-ラクタマーゼ産生株であった. Hi感染症の疫学調査として乳児検診児181名の咽頭Hi, Hib型保有率を抗血清加倍地を用いて検索しHib1.7%を認めた. また2つの保育園児についても, Hi骨髄炎児との関係においてHib保有状態を検索し, 血清型別・生物型別検討を進めている.
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