Wistarラットを用い、ナトリウム摂取と血圧、赤血球膜ナトリウム輸送との関連、および赤血球膜ナトリウム輸送の家族集積性について様々な角度から検討した。(以後、ナトリウムはNaと略す) 高Na食で飼育されたラットは、他の正常〜低Na食のラットより有意の血圧上昇を示したが、赤血球膜Naポンプユニット数は他群と有意差を認めなかった。即ち、赤血球膜Naポンプユニット数が正常でも、高Na食によりラットの血圧は上昇した。逆の見地からすると、赤血球膜Naポンプユニット数は、摂取食塩量に影響されず、また高血圧そのものによる影響を受けないことが示唆された。 赤血球膜Naポンプユニット数が低値の場合、ヒトでは将来の高血圧に直結する恐れが指摘されているが、ラットでは特に正常〜低食塩食で飼育した場合、高血圧への進展を防げる成績を得た。 家族集積性に関しては、赤血球膜Naポンプユニット数が低いラットの子孫でも必ずしも低値を示さない場合も多かったが、集団として統計学的に処理すると、やはり子孫のラットにおいても赤血球膜Naポンプユニット数は親の成績を反映することが示唆された。 尿中Na、カソクレイン、カテコラミン排泄、血漿心房性Na利尿ペプチド、血漿レニン活性等は必ずしも個々に特有な値を示すわけではなく、Na摂取量により変動する因子と考えられた。即ち、Na摂取が多くなるほど、尿中Naおよびカソクレイン排泄、血漿心房性Na利尿ペプチドは増加し、尿中カテコラミン排泄および血漿レニン活性は低下する傾向が得られた。したがって、これらの内分泌諸因子に関しては、家族集積性は認められなかった。
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