研究概要 |
14才女性でNK細胞の白血病性の異常増殖を示す症例を経験した。異常細胞は大型の顆粒を有する(LGL)細胞で、Tγ細胞の範畴に属すると思われた。表面形質はLeu【11^+】,OKT【11^+】であったが、NK細胞に関係する他のLeu7,T3,T8,OKM1,HNK1およびTdTは陰性であった。染色体分析では47XXXの異常が認められた。DNA分析ではTβは認められなかった。NK細胞活性は低かったが、IL2の刺激により著明に上昇した。しかしIFNγでは活性の上昇はわずかであった。このようなリンホカインに対する反応性の違いは、胎生期や臍帯血中のNK細胞の性質と一致しており、本例のNK細胞が未熟な分化段階にあるものと推測された。またこの細胞はIL2の刺激により、ADCC,LAK活性の上昇を示した。非刺激時にはTac抗原陰性であったが、IL2刺激により陽性となり、【^3H】チミジンの取り込みが著明に上昇し、さらにIFNγの産生が認められた。 本例では常に顆粒球減少症がみられるが、そのメカニズムを解明するため本例のNK細胞の、正常ヒト骨髄幹細胞(CFU-C)に与える作用をin vitroコロニー法で検討した。IL2刺激下のNK細胞は著明にCFU-Cを抑制した。NK細胞の培養上清も明らかにCFU-Cを抑制した。培養上清を抗IFNγ抗体で処理すると、その抑制効果は消失したところから、顆粒球減少は幹細胞のレベルでIFNγが関与していることが強く示唆された。以上より、Leu【11^+】,Leu【7^-】のLGL細胞は、多分、前NK細胞の分化段階に属し、IL2の刺激により、Tac抗原を発現し、異常に増殖し、IFNγを産生し、そして骨髄幹細胞にも影響を与えるものと考えられた。
|