先天性免疫不全症の病因を遺伝子レベルで探り、DNA診断に役立てるべく、伴性劣性遺伝性免疫不全症患者および家族について制限酵素によるX染色体DNA断片多形性を解析し、以下の成績を得た。 1.X染色体ライブラリィーから、X染色体短腕2か所、長腕5か所に由来する9種類のプローブを作製した。 2.出身の全く異なる日本人男性5名、女性10名について、上記プローブと8種類の制限酵素で多形性を検討した結果、多形は認められなかった。この均一性は4塩基認識酵素を増やして検討した場合も同様であった。 3.ブルトン型免疫不全家系構成員10名を対象として、上記プローブ9種類に加えてOTC、PGK、HPRTのcDNA、欧米から入手した4種類のアノニマスプローブを用いて検討した結果、DXS17;S21プローブ(TaqI酵素処理)との間でブルトン病遺伝子座との連鎖が示唆された。一方、PGK領域との間では組み換えが起っており、本症疾患遺伝子座はXq21・2ーXq22付近と推定された。 4.キャリアー診断の検討結果、今回対象とした家系においては、いずれのDNAプローブを用いた場合も、キャリアーを推定するに充分な情報は得られなかった。 以上より、多形性解析は遺伝子診断において重要かつ有効な手段であるがX染色体においては常染色体に比べ多形頻度が少く、より情報の多いプローブの作製と選択が重要であろうと考えられた。また今回の我々の検討結果から、ブルトン型遺伝子キャリアーの診断においては多形性解析単独よりむしろ、本症の病因的特徴が生かした、キャリアーB細胞におけるX染色体の不活化の不均一性を指標とする方法と組み合わせることが最適であり、キャリアー診断は慎重であるべきと考えられた。
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