母体喫煙により母体血中Carboxyhemoguloboin(COHb)が増加し、胎児血中COHbも増加すること、又、それによって胎児の発育も障害される可能性のあることを妊娠ラットに対する一酸化炭素(CO)ガス負荷実験により明らかにしてきた。今回は、同じ実験系を用いて、胎仔のCOHbの上昇が中枢神経系の発達に及ぼす影響について検討を加えた。1.妊娠14日目から25ppmのCOを20日目まで負荷すると、母体血中COHbは0.51〜4.16Sat.%と個体差を認めた対照群0.44Sat.%に比して高値を示した。なお、4.16Sat.%を示した母体は死亡した。母体の体重増加はCO負荷群ではほとんどみられず、血中COHbの高値をとった母体では体重減少するものがあった。2.胎仔の血中COHb値は、対照群で0.95、CO負荷群で1.96Sat.%を示し、胎仔の体重は対照群で43g、負荷群26g、脳重量はそれぞれ108mg、94mgとCO負荷群で有意に低体重、低脳重量であった。3.脳DNA量及び脳蛋白量は同様にCO負荷群で低値をとった。 この時期のラットの脳では盛んにNDA合成がなされており、今回の実験結果から、母体に対するCO負荷は胎仔脳のDNA合成を著しく障害することを示し、母体喫煙が胎児の中枢神経発達を障害する可能性を示唆している。 今回の実験はCO濃度が25ppmと比較的低いレベルで行ったが、今後負荷CO濃度や負荷する日数を変化させ、COの影響をより詳細に検討し、CO濃度のcriticalレベルを明らかにしたい。
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