研究概要 |
先天性高乳酸血症の欠損酵素としてはピルビン酸脱水素酵素(PDH)複合体を含むTCAサイクル系酵素, ピルビン酸カルボキシラーゼ(PC)およびホスホエノールピルビン酸カルボキシナーゼ(PEPCK)など糖新生系酵素, チトクロムC酸化酵素(CCO)を含む電子伝達系酵素が知られている. 本症の酵素診断は通常培養皮層線維芽細胞や生検あるいは剖検でえられた各種臓器を用いて行われるため診断までに長時間を要し, また患者に苦痛を与える. そこで容易に採取しうる末梢血を用いる先天性高乳酸血症の系統的酵素診断法を確立した. すなわち末梢血を採取後, 直ちに血小板と単核球を分離し, PDH複合体活性を表わす(1-^<14>C)ピルビン酸脱炭酸能, TCAサイクル機能を表わす(3-^<14>C)ピルビン酸脱炭酸能およびCCO活性は血小板を用いて, またPC, およびPEPCK活性は単核球を用いて測定した. ついで全国の医療機関より輸送された先天性高乳酸血症患者40名の末梢血を用いて先天性高乳酸血症の系統的酵素診断法の有用性について検討し, 以下の結果をえた. 1.輸送検体の血小板(1-^<14>C)ピルビン酸および(3-^<14>C)ピルビン酸脱炭酸能, CCO活性は不安定であったが患者の値を患者の検体と同時に測定した対照の検体の値と比較することにより, PDH複合体欠損症およびCCO欠損症を推測しうるものと思われた. 2.単核球PEPCK活性は輸送検体においても比較的安定した活性を示した. 3.単核球PC活性はきわめて不安定であり, 検体輸送中の保存方法や単核球の分離方法の改良が必要であった. 4.本診断法によりPDH複合体欠損症1例を診断しえた.
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