研究概要 |
新生児・未熟児において、早期経口投与が消化管の発育および発達を促し、経静脈栄養はこれに抑制的に働くこと、さらに母乳栄養は人工乳に比し、消化管の発育および発達に対しより促進的に働くことを明らかにする目的で本研究を行った。初年度に得られた結果は下記の通りである。 動物実験:1.intestinal length(生下時体重に対する比)は、日令0,2では差異が認められなかったが、日令4日で母乳栄養,人工栄養,経静脈栄養の順に長い傾向を認めた。2.intestinal wet weightは母乳栄養犬で日令2および4で段階的に増加し、日令4では母乳栄養が最も重く、次いで人工栄養そして経静脈栄養の順に低値であった。3.腸粘膜中の総蛋白貭量は、日令0,2,4日の母乳,人工栄養犬で差を認めなかった。しかし経静脈栄養犬で著しく低値であった。4.腸粘膜中のDNA濃度は、総蛋白量とほぼ同様な傾向で、経静脈犬で著しく低値であった。5.腸粘膜brush border enzymeの1つであるAlkali phosphataseは、十二指腸と空腸で母乳栄養犬に高い傾向があり、日令4日の空腸のそれは経静脈栄養群で著しく低値であった。 臨床研究:1.未熟児の日令0〜3日の吸収能は成熟児に比し著しく低い。しかし経口(腸)投与開始4〜5日で成熟児と同程度の吸収能に達した。2.成熟児に於ても日令0〜3日の吸収能は生理的に未熟でその値は低く、経口投与開始後2〜3日で乳児の正常域に達する。 結論(今回のまとめの): 1.経口(腸)栄養は腸管の発達に重要で、母乳栄養はこれを促進し、経静脈栄養は腸管の萎縮を起こすことが考えられる。2.生直後からできるだけ早期に経口的に母乳栄養を行う事が望ましく、不必要な経静脈栄養はさけるべきである。
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