研究概要 |
心筋ミオシンには【V_1】,【V_2】,【V_3】という3つのアイソザイムがあることが知られている。【V_1】と【V_3】はそれぞれαα,ββミオシン重鎖(MHC)mRNAのhomodimerであり、【V_2】はαβMHCmRNAのheterodimerである。【V_1】は高いATPase活性とcontractile velocityを特徴とする。【V_3】は低いATPase活性と低いcontractile velocidtyを特徴とする。【V_2】は【V_1】と【V_3】の中間型に相当する。このMHCmRNA遺伝子と発現アイソザイムパターンは、発達により変化し、又ホルモンにより制御されていることはすでに知られている。さらに心臓圧又は容量負荷による変化の報告もある。カフェインによりラット胎仔の心奇形が誘発されることは妊娠ラットにて確認されている。この心奇形の機序をさぐる一手段として甲状腺摘出ラットに15,30,60mg/kg/dayの3種類の量のカフェインを各々10週間投与し屠殺した。心筋よりRNAを抽出しbprodeとしてはハーバード大学Nadal-Ginard博士より寄与されたα,β-MHCmRNAより作製されたC-DNA(PCMHCmini26,PCMHCmini5)を使用しS.ヌクレアーゼマッピング法により心筋α,β-MHCmRNA遺伝子発現の割合を分析した。この結果カフェイン投与後の甲状腺摘出ラット心室筋においてβ-MHCmRNAが減少し、α-MHCmRNAが増加していた。成鼠で85%近く認められたα-MHCmRNAが甲状腺摘出ラットではほとんど認められない。カフェイン投与後、30,60mg/kg/dayカフェイン投与群で再びα-MHCmRNAの発現が認められた。また同一心筋より調べたMHCアイソザイムのパターンもMHCmRNA遺伝子発現と同様、甲状腺摘出ラット心室筋において【V_3】が減少し、【V_1】が増加することがpyrophosphate acrylamideゲル電気泳動法を用いて明らかになった。ATPase活性も調べられ、同様にカフェイン投与群で活性の増加が認められた。次に同じキサンチン誘導体であるテオフィリンとサイクリツクAMPについて同様に調べた。カフェインと同様の結果が得られた。以上、MHCmRNA遺伝子発現とアイソザイムパターンは、薬物負荷による影響もうけている事が確認された。
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