研究概要 |
1.イソプロテレノールは鶏胚において心大血管奇形を生じる。そこで本薬剤を、Hamburger-Hamilton stoge 21の鶏胚に静注し、その血行動態作用を見た。血圧及び血流(心拍出量)は量依存性に減少、心拍数は最も濃い濃度のみで僅かに増加したのみであった。静脈圧は低下した。この結果から、これはポンプ機能低下によるか、静脈系への血液のプールによると考えられた。上に見られた変化の時間的経過から、前者による可能性が強いことが推測された。 2.我々の教室でアセチルコリン投与が鶏胚心に心室中隔欠損を作ることを示した。そこで、その静脈内注入による鶏胚の心血管への作用を調べた。その結果、心拍数は、注入直後の心停止、1〜2分後の突然の頻脈、その後徐々に投与前値に復した。血流と血圧はそれに呼応して、始め著しく低下、頻脈に伴って増加上昇、以後、対照値への復帰がみられた。 3.哺乳類の心血管の血行動態的な発生過程はまだ未知である。我々は、ラット胎仔を器宮培養に準じた方法で母体から取り出し、臍帯動脈血圧と発生途中の心臓の流出路における血流を測定する方法を考案した。これを用いて胎生11,12,13,15日の胎仔で各々の正常値を得た。 4.カフェインが鶏胚とラットで異なった心大血管奇形を作ることが知られている。そこで、その静注による血圧心拍数の変化を、鶏胚とラット胎仔で比較した。鶏胚では血圧上昇,心拍数不変,ラット胎仔では血圧不変,心拍数増加と、両者間に差がみられた。 5.妊娠ラットにビスダイアミンを投与すると円錐動脈幹奇形を多く発生する。そのメカニズムを解明する一助として、母体に同薬剤を投与し、その胎仔の血行動態を調べた。心拍数,血圧,血流速度は、対照群と差がなかった。アセチルコリンを負荷すると、その反応に差が生じ、ビスダイアミンが機能的障害をもたらした可能性を示した。
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