研究概要 |
形態形成初期の血行動態変化と形態異常発生との関連性が示唆され, 一部の心血管作動薬では鶏胚において心臓大血管の催奇形がある. そこで鶏胚に, 主にHamburger-Hamilton stage21で血行動態作用を調べた. イソプロテレノールは, 心拍出量, 卵黄動脈圧を量依存性に減少させた. この心拍出量減少作用と本剤による大動脈弓低形成の因果関係が示唆された. カフェインでは, 心拍出量増加, 卵黄動脈圧上昇が見られ, 本剤による大動脈瘤との関連性が示された. アセチルコリンでは心拍数が一過性に減少し, 卵黄動脈血圧と血管抵抗は量依存性に上昇した. 神経堤細胞破壊後の鶏胚では, 血圧, 心拍数, および, それらのアセチルコリンに対する反応は, 対照群と差がなかった. 即ち, 神経堤細胞操作による鶏胚心奇形の発生には血行動態的変化の関与は少ないと考えられた. カルシウムは何等の作用を示さず, カルシウム拮抗剤は心拍数, 血圧, 心拍出量を減少させ, 一部には完全な循環停止となった. 水溶性薬剤の胎児への影響を示唆した. 一方, 我々はラット胎仔での血行動態指標の測定法を考案し, 胎生11〜15日での臍帯動脈圧と流出路血流速度の正常値を得た. この標本で, カフェインは血圧は変化させず心拍出量を増加させた. 本剤がラットでは心室中隔欠損を発生させることとの関連性が示唆された. 又, ビスダイアミンは総動脈幹遺残などを発生させ神経堤細胞への作用を介する可能性がある. 神経堤細胞は自律神経へと発生するので, ビスダイアミン処置ラットの胎仔でアセチルコリンの心拍数, 血圧, 心拍出量への影響を検討した. 薬剤負荷前の値は対照と差が無かったが, 負荷に対する心拍数の反応が異なり, ビスダイアミンの細胞機能への影響が示唆された. 以上, 心血管作動薬の催奇形性は血行動態変化を通して作用を発揮するものと, 直接作用によるものとに分けられる事が示唆された.
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