研究概要 |
〔目的〕妊娠末期の母親に抗炎症剤を投与すると胎児の動脈管が収縮する. その際の胎児の心臓に生じる心不全と心肥大を動物実験で解明することを目的とし, 次の実験を行なった. 〔方法〕妊娠21日目(満期)のラットに10mg/kgのインドメサシンを胃内注入し, 1,4,8,24時間後に胎仔を帝王切開で取り出し, 直ちに-80°Cのドライアイスアセトンに投入して凍結した. 凍結した胸部を短軸面で500umの厚さで切り, 心尖部から心基部までの連続断面を実体顕微鏡で撮影した. この心臓断面写真上の左右心室内腟, 心室筋, 左右心房内腟の面積を測り, 心尖部から心基部迄集計し, 輪切りの厚さ(500um)を乗じて, 各心室と心房の容積及び心室筋量を計算した. 〔結果〕胎仔の動脈管がインドメサンシンにより収縮すると右室に圧負荷がかかり, はじめ(1〜8時間後迄)は右室の内腟が拡張したが, 24時間後には右室内腟は縮小し, 壁は厚くなり, 求心性肥大が生じた. 右室から大動脈への血流が減少した結果, より多くの血液が卵円孔を通して右房から左房へ流れ左室は内腟が拡大した. 即ち左室には遠心性肥大が生じた. 〔考察〕胎生期の心室に圧負荷が増大するとはじめに心不全を生じて拡張しその後代償的に求心性肥大が生じることが証明された. これはラット胎仔を用いての心肥大モデルとしては世界ではじめての研究である. ラット胎仔の心室筋量と内腟の測定方法としても, 私達の研究方法はユニークな方法である.
|