研究概要 |
遺伝性蓄積症には内臓臓器にのみ蓄積する型と同時に神経症状を呈して死亡する型があり, ニーマンピック病もこれに該当する型がある. 後者についての治療法は現在までなく何故脳障害が発症するものとそうでないものがあるのかの機構は殆んど解明されていない. この成因が明らかとされることで神経症状を呈する蓄積症の治療法の糸口がつかめると考える. 幸い私達はヒトニーマンピック病のモデル動物で肝脾腫と神経症状を呈して死亡するマウスを見出しており, 肝・脾へのスフィンゴミエリンとコレステロールの著明な蓄積と酸性スフィンゴミエリネース活性の低下を明らかとした. このマウスの肝と脳の細胞分画での活性は, 特にミトコンドリア・ライソゾーム分画で酸性スフィンゴミエリネース活性が著しく低下していた. 又, 電子顕微鏡による形態学的検討の結果, 肝および脳ともにミトコンドリア・ライソゾーム分画で, ミトコンドリアとライソゾームの膨張, 変形が著明であった. 以上の結果から, 本症では酸性スフィンゴミエリネース活性の低下により, 膜構成に重要なスフィンゴミエリンとコレステロールの代謝が障害され, 膜の保持や形態維持が損われたものと考えられた. この減少は生体内に於ても同様に生じており, 脳におけるミトコンドリア・ライソゾーム分画での酸性スフィンゴミエリネース活性の低下が神経症状の発現に強く関係しているのではないかと考えられた. 得られた酸性スフィンゴミエリネースの精製を行い, 抗体作製を試みた. 得られた家兎抗血清はオクタロニー法及びwestem blotting法でヒト胎盤およびマウス肝の酸性スフィンゴミエリネースと交叉反応を示したが, 試験管内での免疫沈澱物は得られなかった.
|