研究概要 |
昭和61年度の研究においては、以下の三点を中心に行なった。 1.ヒト腎尿網管基底膜(TBM)抗原の性状の分析 ヒト腎よりTBMを分離し、コラーゲナーVで可溶化して、抗TBM型腎炎患者の血清との反応を immunoprecipitation法とblotting法にて観察した。この実験から、TBM抗原は分子量が54KD,48KDの二つの蛋白から成り、各々の等零点 p27-8,6.5-7であることが明らかになった。また、患者血清の中には これらの抗原物質との反応を欠くものが存在し、抗TBM抗体がheterogeneousなものであることが判明した。これらの成績は論文として J.Immunal 136・1654-1660,1986 に発表した。 2.ELISAによるヒト抗腎基底膜抗体の測定 ヒトの流血中の抗糸球体基底膜(抗GBM)抗体と抗TBM抗体を迅速、簡便に、かつ正確に検出することを目的として、ELISA法での測定を確立した。コラーゲナーVにて可溶化したヒトGBM,TBMを各々抗原として用いた。抗GBM腎炎患者血清,抗TBM腎炎患者血清は、本法にて他の腎炎患者血清や健常人血清と区別しうる強い反応を示した。この方法は、ヒト抗腎基底膜抗体の検出に有用と思われる。これらの成績は、日腎誌 28:1321-1328,1986 に発表した。 3.腎基底膜糖鎖と抗基底膜抗体との結合性について 腎基底膜中の糖鎖が、抗GBM抗体,抗TBM抗体との結合に関与しているか否かを、腎組織上でのレクチンによるblockingテストで検討した。各種レクチンのうち、RCAI(galactoseに特異的に結合する)がこの結合を阻害し、galactoseを含む糖鎖が抗原と抗体の反応に関係していることが明らかになった。この成績は Am.J.patholに掲載予定である。
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