ヒトの腎炎のなかで、腎基底膜が抗原となって発病する二つの腎炎、 (1) 抗系球体基底膜 (抗GBM) 型腎炎 (時に、肺出血を合併する) 、と (2) 抗尿細管基底膜 (抗TBM) 型腎炎、とにおける対応抗原の研究かつ以下のことが明らかになった。 1.ヒト抗GBM抗体と反応する肺胞基底膜 (ABM) 中の抗原物質の分析 この抗原物質、以下 Goodpasture (GP) 抗原と呼ぶ、はヒト正常ABMをコラゲナーゼで消化することによって可溶化され、分子量22-28ΚD、40ΚDで、monomer-dimer構造をとり、算電点8以上と強い塩基性を有する。Inhibition FLISAの成績から、ABM中のGP抗原もGPM中のそれと同じくIV型CollagenのNC〓Domein上に存在すると考えられる。正常ヒトABM中のGP抗原にはHeterogeneityがあり、また、抗GBM抗体とABM中のGP抗原の反応は抗体のAffnityによって影響され、これらが抗GBM型腎炎での肺出血の出現の有無と関連していると考えられる。 2.ヒト抗TBM抗体の対応抗原の分析 この抗原物質は、正常ヒトTBMをコレゲナーゼ消化することにより可溶可され、分子量54ΚD、48ΚDで、算電点はおのおの7-8、65-7であった。ヒト抗TBM抗体とTBMとの反応を連続切片上で観察すると、この反応はRicinus communis agglutinin I (Galactaseを含む糖鎖と結合するレクチン) によってブロックされた。また、ゲルシ過、イオン交換カラム、レクチン・カラム、逆〓カラム順に通すことによって、54ΚDの抗原物質を分離・精製することができた。
|