研究概要 |
昨年度はポリエチレン・イミン法を使用し, 基底膜部のアニオニック・サイトを検出する基礎的な検討を加えた. その結果, 正常皮膚において, 表皮・真皮の境界部の基底膜, 血管の基底膜, 神経の基底板に陽性反応物が観察され, シューラーの方法は安定した技術であることが確認された. そこで, 今年は, 血管炎をきたす可能性のあるアナフィラクトイド紫班, 全身性紅班性狼瘡などの疾患の電顕標本の作成と観察, また正常のコントロールとして作成している腫瘍の病変部およびその隣接正常皮膚の観察をおこなった. とくに腫瘍と正常との差を中心に観察したところ, 上皮性腫瘍の腫瘍と真皮の境界部の基底膜では脂漏性角化症などの良性腫瘍では正常皮膚とほぼ類似の成績を得たが, 基底細胞上皮腫では反応物のサイズ, 頻度が正常とは異なることが判明した. また悪性腫瘍である有棘細胞癌では, 基底膜が欠損ないしは減弱するが, アニオニック・サイトは基底膜の存在する部位でわずかに検出されたが, 数, 大きさとも小さく, 腫瘍性病変ではアニオニック・サイトに大きな変化がおこることが確認された. しかし, 腫瘍部の間質側にある血管の基底膜は正常と類似の反応物の分布が見られた. ただし, リンパ球をはじめとする炎症性の細胞浸潤のある部位では間質に微慢性に反応物が検出される部位があった. 一方, 血管炎を通常はおこさない尋常性乾癬をコントロールのひとつに取り上げ検討したところ, この部位でもリンパ球, マクロファージの多い部位では血管の基底膜が判然とせず, さらにアニオニック・サイトが微慢性に検出された. 最終年度はこれらの血管炎以外の疾患にける変化を参考にして, アナフィラクトイド紫班, 全身性紅班性狼瘡などの疾患の血管での変化を観察し, まとめをしたい.
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