多くの走化性因子は好中球の遊走に対して作用する時の至適濃度をこえる非生理的濃度ではじめて直接細胞に働いてrespiratory burst(RB)をひきおこす。そのため細胞が遊走する時にはRBは起りえないと長い間考えられてきた。細胞の遊走を測定する方法にBoyden chamber法があるが、このシステムを改良してそのまま化学発光を測定してみた。FMLPなどの因子を2つの部屋の下室に、細胞とルシゲニンを上室に入れて化学発光を測定した。その結果、従来の走化能テストと同様生理的濃度で発光がみられた。これはSODで抑制されることから、この系におけるスーパーオキサイドの産生が示唆された。この結果は従来の説をくつがえす新知見であると同時に、本研究の遂行上有力な手段となる。1例の天庖瘡について検討したところ、水疱内容の【C5_a】を含むfractionにおいて高い反応がみられた。ラジノイムノアッセイによる【C5_a】量は17.2ng/mlであり、通常人皮膚suction blisterの9.68より有意に高く、本疱においても【C5_a】が何らかの役をしているものと推測される。以上の仕事の過程において隅然の副産物として、上述の系を用いて好中球のadherenceが調べられることがわかった。細胞を分離してすぐに上室に入れ、走化因子なしの状態で化学発光を測定すると、きわめて高い反応が得られた。用いたガラス管およびfilterをシリコン化する処理の検討から、この化学発光か細胞がfilterに接着する時に産生されるものであることが判明した。しかも、plasmaの存在下でも反応のみられることから、この反応はin vivoで好中球が血管内皮に接着する時のRBに近い反応である可能性が強く示唆され、新しいadherence testとしての有用性も充分期待できる。
|