研究概要 |
Cockayne症候群(CS)培養細胞の紫外線感受性の機序を調べる目的で実験を行ない以下の結果を得た。(1)DNA修復等に関与するpoly(ADPribose)合成の基質であるβ-【NAD^+】がCS細胞の紫外線致死感受性に及ぼす影響をみた。使用したcell lineはCS,色素性乾皮症,健常人由来のlympho blastoid linesである。254nm紫外線照射後の同細胞を0.1mM(cytotoxityを認めない濃度)のβ-【NAD^+】添加ないし非添加培地にて3日間培養し、細胞数(生存)を算定した。これより生存率を算出して比較した。健常人、色素性乾皮症由来の細胞ではβ-【NAD^+】添加による生存率の変化はなかったが、CS細胞の一部では有意の生存率の上昇を認めた。上昇の程度は、β-【NAD^+】添加に反応しなかった。元来比較的紫外線致死感受性のやや低いCS細胞の生存率と同じレベル迄であり、健常人の致死感受性(生存率)のレベル迄は回復しなかった。この結果はCS致死感受性の一部はβ-【NAD^+】あるいはその分解産物である。nucleotede nucleaside,nicotinamideの供給により改善されることを示している。(2)CS細胞の紫外線致死感受性にpoly(ADP ribose)合成が関与するか否かを検討するために同合成阻害剤である3-Amiso benzamide添加実験を行った。用いた細胞はCS、健常人由来である。方法は(1)とほぼ同様で5mMの3-Amino benzamide添加ないし非添加培地にて培養した。5mM 3-Amino benzamide単独でも健常人,CS細胞ともに同程度の生存率の低下をもたらした。紫外線照射を加えると各々紫外線単独の生存率の低下と相加的な生存率の低下をもたらした。3-Aminobenzamide濃度を低くしてcytotoxic effectの出ない程度にすると紫外線照射時の生存率とほぼ同等の生存率を示した。3-Aminobenzamideを高濃度で作用させると健常人と同様CS細胞も紫外線致死感受性の増強をみるが、3-Aminobenzamideのcytotoxic effectと相加的作用によると考えられ、紫外線のCS細胞への効果とpoly(ADPribose)合成阻害効果は独立していると考えた。
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