アトピー性皮膚炎の急性、亜急性および慢性湿疹病変において、モノクローナル酵素抗体法を用いて、浸潤リンパ球サブセットおよびランゲルハンス細胞の動態を調べ、下記の成績を得た。 1.急性湿疹病変:成人患者16例の急性湿潤性湿疹病巣を対象にした。浸潤リンパ球の大多数はT細胞であり、B細胞は欠如していた。浸潤T細胞サブセットでは、ヘルパーT細胞が圧倒的に多く、サプレッサーT細胞は少数であった。ヘルパーT対サプレッサーT比の平均値は10.9であった。表皮および真皮におけるランゲルハンス細胞の分布はさまざまで、増加部位と非増加部位が混在した。 2.亜急性湿疹病変:成人患者24例の掻痒性乾燥性皮膚を対象にした。浸潤リンパ球がT細胞性であること、および浸潤T細胞サブセットではヘルパーT細胞が圧倒的に優位であることは、急性湿疹病変と同じであった。しかしランゲルハンス細胞は表皮および真皮において明らかに増加していた。 3.慢性湿疹病変:成人患者14例の苔癬化病巣を対象にした。浸潤リンパ球がT細胞性であること、および浸潤T細胞サブセットではヘルパーT細胞が優位であることは、急性〜亜急性病変とほぼ同じであった。しかし、ヘルパーT対サプレッサーT比の平均値は3.5であり、この値は急性病変に比べて明らかに高い。ランゲルハンス細胞は表皮および真皮において著しく増加していた。 以上の成績より、本症の病変部におけるサプレッサーT細胞の減少は恒常的なものではなく、病変の時期とともに大きく変動することが判明した。
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