研究概要 |
〔目的〕光感作物質存在下における長波紫外線 (UVA) 照射が、ラット腹腔肥満細胞脱顆粒に及ぼす影響を、作用機序の異なるいくつかの光感作物質を用いて検討した。更に、ヒト皮膚由来肥満細胞について検討を加える必要があり、その採取法ならびにヒスタミン遊離能について検討した。 〔方法〕1) 精製ラット腹腔肥満細胞 (1×10^4個/ ml) に種々の濃度の8-metho-xypsoralen (8-MOP) 、tetrachlorasalicylanilide (TCSA) 、afloqualoneを添加後、UVA照射した。照射終了後compound48/80 (48/80) を添加し脱顆粒を起こさせヒスタミン遊離率を求めた。2) 正常ヒト包皮ならびにレックリングハウゼン病患者皮膚神経線維腫を酵素処理して分離しヒト皮膚由来肥満細胞浮遊液を得た。それを用いて48/80、calcium ionophore,substance Pで刺激を加え、ヒスタミン遊離を測定した。 〔結果〕1) 8-MOP (100ng/ml) +UVA (60KJ/m^2) 、TCSA (500ng/ml) +UVA (12.5KJ/m^2) 、afloqualone (500ng/ml) +UVA (50KJ/m^2) で処理した肥満細胞からの48/80によるヒスタミン遊離は無処置群と比較して有意に抑制された。光感作物質添加のみ、UVA照射のみの群では抑制は認められなかった。 2) 酵素処理により正常ヒト包皮ならびに神経線維腫より得られた肥満細胞は、脱顆粒刺激により正常ヒト包皮由来、神経線維腫由来とも同様にヒスタミンを遊離し、calcum ionophore (10^<-6>M) で最も強い脱顆粒がみられた。 〔結論〕種々の光感作物質が紫外線照射により肥満細胞の脱顆粒を抑制することが示され、今後の展開としてその抑制機序の解明、光感作物質のinvitro検出法としての有用性、光感作物質による皮膚アレルギー性疾患の治療への応用などが期待される。またヒト皮膚由来肥満細胞が酵素処理にて皮膚組織より分離でき、脱顆粒刺激によりヒスタミン遊離を惹起しうることが示され、今後ヒト皮膚肥満細胞を用いた研究が可能となった。
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