研究概要 |
虚血に陥った組織が生き残るためには如何に早くかつ豊富に側副血行路が新生されるかということが重要な因子となる. この血行新生促進因子として考えられるのは血圧差等の物理的なものの他, 生化学的なものとして低酸素虚血代謝物, あるいはある種のホルモン様物質の関与が挙げられる. 本研究の端緒はラットの腎動脈狭窄術を施された虚血腎において, 側副血行路形成が降圧剤であるカプトプリルにより促進されるという事実を見い出した後, ある種の活性ホルモンの関与の可能性に着目したことから始まった. そこで薬理作用の異なる降圧剤とドララジンとカプトプリルとの間に側副血行路形成に差がないかをまず検討してみた. 方法は腎動脈狭窄のためのクリップを測定前に完全に押しつぶすことにより絶対側副路血流量を測るものである. その結果, 狭窄術後6週間ではカプトプリル, ヒドララジンともに対照群より心拍出量は有意に上昇していたものの, 絶対側副血流量はカプトプリル, 対照でそれぞれ0.18±0.049,0.32±0.047(mg/kg/min)と薬剤非投与の対照群のほうが有意(P<0.05)の増加を示した. これに反し血圧はそれぞれ139±8.33,18.4±7.83(mmHg)と前者の方が当然のことながら降圧剤の効果を示し有意(p<0.001)に低下していた. 予期に反する6週間後のカプトプリル群の絶対側副路血流の低下という結果は, 血圧の有意差に認められる様に側副路形成促進には血圧という物質的因子の相互関与の重要性が考えられた. この事実は側副路形成が形成が狭窄術後1週間以内に終了するという我々が見い出した事実と相反せず, この間にある種のホルモンは活性であり, カプトプリルはこれを活性促進させたと考えられる. また同期間において細胞から細胞へへの情報が伝達されて側副路形成が促進されるという可能性を同様の実験系で他の研究者とともに発見した. 現在このホルモンの活性促進あるいは阻害はどの時点で最も作用しやすいかを検討中である.
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