研究概要 |
放射性同位元素で標識したモノクローナル抗体は試験管内, 生体内で対応する抗原に特異的に結合する. そこで本研究では, 放射性ヨード(I-131), インディウム(In-111), ガリウム(Ga-67), テクネティウム(Tc-99m)などの放射性金属核種を用いるモノクローナル抗体の放射性同位元素(以下RI)標識法の基礎的研究をさらに発展させるとともに, 悪性黒色腫(メラノーマ)患者を対象に, インディウムー111標識モノクローナル抗体を静脈内投与し, その臨床的有用性を検討した. さらにヒト大腸癌を移植したヌードマウスを用いて, RI標識したモノクローナル抗体を利用した新しい核医学治療法の開発を目的とした. インディウムー111標識抗体ZME-018を用いた悪性黒色腫(メラノーマ)のシンチグラフィでは, 約80%の腫瘍が陽性となり, 免疫組織所見による結果とよく一致した. 今後RI標識抗体を用いるシンチグラフィの臨床的有用性, これまでのガリウムシンチグラフィとの比較などの検討が望まれる. ヒト大腸癌を移植したヌードマウスを用いて, 腫瘍, 全身への放射線吸収線量を求めたところ, 全身への放射線吸収線量の10倍の線量を腫瘍に照射することができる計算となった. しかし, 癌の放射線治療としては十分な放射線吸収線量ではない. 多くの抗体をヨード, インディウムで標識し, その体内分布を求めたところ, 抗原への結合親和定数が著しく低い抗体は, 画像診断には適していない. よく似た結合親和定数で, 同一の抗原と反応する抗体では, 放射性ヨードよりもインディウムー111標識抗体の方が, インビトロの性質をよく反映することが明らかとなった. 本法は癌のみならず, 心筋硬塞や血栓症の診断への応用が期待されるため, 各種モノクローナル抗体の臨床応用を進める.
|